「子どもが自発的に片づけてくれない」
「おもちゃの収納が上手くいかない」
このような悩みで困っていませんか?
片づけには「整理・整頓・清掃」というプロセスがあります。
前回はその中でも特に重要な「整理=物の捨て方」について詳しく説明しました。
今回はその次の段階である「整頓」のお話です。
「整頓」とは、「必要なもの」を「必要な時」に「必要なだけ」取り出せるようにすることです。
まずは整頓しやすい環境を親が用意し、整頓する方法を子どもに伝えることで子どもが少しずつ片づけられるようになっていきます。
そのために必要な「取り出しやすく、一目で分かりやすい収納」に整える工夫を詳しく紹介していますので、ぜひご覧下さい。
その他「整理・整頓・清掃」全体のプロセスや、片づけでの子どもへの声のかけ方、親のやってはいけない行動については別の記事で詳しく紹介しています。こちらもぜひ見てみてください。
散らかりやすい収納とは面倒な収納
まずは散らかりやすい収納の例です。
子どもが人形で遊びたがっています。
その人形は、引き出しの中にしまってある白い箱の中に入っているはずです。
引き出しを開けると、一番上には黒い大きな箱が入っていました。まずは黒い箱をどけます。
黒い箱の下には、白い箱が3つ入っていました。
どれに人形が入っているか分からないので、全部箱を開けて確認しました。
いかがでしょうか。
必要なのは「人形だけ」のはずなのに、
・引き出しを開ける
・黒い箱をどける
・白い箱を3つ出す
・白い箱を3つ開ける
・人形を取り出す
なんと9回もの動作を必要としました。かなりめんどくさいです。
これだけ多くの動作を行った上に、不必要な物まで出しています。
おそらく部屋は遊ぶ前にもかかわらず、黒い箱と白い箱ですでに散らかっています。
まさに「整頓」されていない収納です。「必要な物」を「必要なだけ」取り出すことができないのですから。
このような事態をさけるためには、ワンアクションでさっと物が出せる「取り出しやすい収納」であること。そして子どもでもどこにしまうか迷わない「一目見て分かりやすい収納」であることが重要になってきます。
取り出しやすい収納を作る2つのコツ
では具体的に「取り出しやすい収納」とはどのようなものでしょうか。
取り出しやすい収納とは?
- 物を出し入れするのに必要な動作(アクション数)が少ない収納
- 適度に分類されている(分類が複雑すぎない)収納
以上2つについて詳しく説明していきます。
1.「物を出し入れするのに必要な動作(アクション数)が少ない」収納
物を出し入れするのに必要な動作とは、「引き出しを開ける」、「箱を取り出す」、「箱を開ける」、「ふたを閉める」などがあげられます。
これらの動きが何回あったかということを、「アクション数」として表現しています。
先ほどのお人形を取り出す例では箱を出したり開けたりして、9回もの動作を必要としました。
つまりお人形を取り出すまでのアクション数は9回ということです。
9回動いて関係のない箱まで出しているので、当然部屋は散らかってしまいます。
仮に片づけが得意な大人であれば、関係のない物をしまったあとに必要なものを使うことができるかもしれません。
しかし相手は子ども。目的はただひとつ。人形で遊ぶことです。
お人形遊びに全く関係のない物は当然出しっぱなしにして、さらにおままごとセットをぶちまけて遊ぶでしょう。
ということは、遊びのあと「さあ片付けましょう」となると、もう大変です。片づけに必要な動作は9回を軽く上回っています。子どもの頭の中はパニックです。
引き出しに入っていたたくさんの箱をどのように片づければいいか分かりません。
箱に目印も無いので、どの箱にお人形をしまえばいいのかも忘れてしまいました。
もはやお人形が箱に入っていたことすら忘れているかも。
アクション数が多いということは、それだけ収納が複雑であるということなんです。
収納が複雑だと面倒くさいので、より一層片づけしたくなくなります。
このような事態を避けるため、目的の物を取り出すまでの動作(アクション数)を減らすことが重要になります。
「引き出しを開けたらすぐに目的の物を取り出せる」くらい収納が理想です。
アクション数で言えば1~2回くらいですね。
特に子どもは「あのおもちゃどこ~?」と探すことも多く、必要な物を探すために他のおもちゃを片っぱしから広げてどんどん散らかすことがあります。
アクション数が少なければ余計な物で散らかるリスクが減ります。簡単な動作で物を収納できるので片づけがラクになります。
アクション数を減らすための収納のコツですが、浅い収納を活用することです!
収納する物にもよりますが、底の深い収納を使用すると収納の中で上に上に物を重ねてしまいますよね。
引き出しを開けたら一目で中に何が入っているか全て把握できる。そんな収納が理想です。
そして次で紹介する「適度に分類されている(分類が複雑すぎない)」収納もアクション数を減らすコツになります。
2.「適度に分類されている(複雑すぎない)」収納
片づけでは適度な分類が必須です。
お母さんの物も、お父さんの物も、子どものブロックもお人形も、全部が同じケースに入っていたらもはやカオスですよね。
収納では、「誰」の「何」を「どこ」に「どれだけ」「どのように」収納するかを考えなければなりません。
例えばはさみなど、家族全員が頻繁に使う道具は、みんなが簡単に出し入れできる場所に収納する必要があります。
逆に仕事で使う書類や道具、使用頻度の低い物なんかは、細かく分類して箱やファイルなどに収納した方が取り出しやすく使いやすい場合もあります。
では子どもの収納はどうでしょうか?
・収納の中に「ふた」はいらない
最初に紹介したお人形を例に言えば、収納(引き出し)の中を黒い箱と白い箱の計4つで分類していました。
箱で分類することにより、一見するとキレイに整頓された美しい収納に感じるかもしれません。
しかし実際は箱を開けないと中に何が入っているかも分からず、結局は全部ふたを開けるという手間(アクション数)が増えます。
仮に箱の中に何が入っているか表記されていたとしても、引き出しを開けたあとにまた箱を開けるという手間は結構面倒くさいものです。特によく使うおもちゃに対しては適さない収納です。
そして取り出すのが面倒な収納の場合、片づけはその10倍近く面倒に感じます。だから部屋が散らかってしまうのです。
ポイントは、収納にはできるだけふたをしないこと。ふたをすれば、上に上にと積み重ねる原因にもなり、そうすると下の箱は取り出しにくくなります。
ふたを開ける手間を減らすこと、収納を上に重ねないこと。これらはアクション数を減らし片づけを簡単にするコツです。
・1つの遊びに関連するおもちゃはまとめる
取り出しやすいように分類することは大事です。とはいえ、1つの遊びに対して細かく仕分けすぎてしまうのは、かえって片づけを大変にする原因になります。
例えば、「おままごとのなべはキッチン台のここの場所、食べ物はこの袋、食器類はこのケース…」
このように「おままごと」というくくりの中でさらに細かく分類してしまうと、1つずつ考えながら収納するのがとても面倒です。これでは子どもが混乱したり、片付けが嫌になってしまいます。
1つの遊びに関連したおもちゃはまとめましょう。「おままごと」の収納ケースにガサッと放り込めるくらいが子どもにも親にも優しい収納ですよね。
おままごととプラレールとブロックをまとめて収納してはいけません。しかし、一つの遊びに関連するおもちゃは分類しすぎないといった、片付けをシンプルにする工夫も大事です。
・「謎のおもちゃ」ボックスを作る
「ブロック」や「おままごと」、「お絵描き・工作」などは分類がはっきりしていて分かりやすいですよね。
でも子どものおもちゃって複雑です。分類がはっきりしない「謎のおもちゃ」が存在します。
例えば食玩。小さいお人形、飲食店でもらうおもちゃ、幼児雑誌の付録などなど。こまごましたおもちゃが多いですが、意外と子どもが気に入ってしまうことがあります。
我が家ではそれらをまとめて収納できる、中身の見えるボックスを用意しています。「謎の(分類できない)おもちゃ」ボックスです。
収納に困ったおもちゃはとりあえずそこに入れておく。そのような箱が1つあると、子どももスムーズに片づけやすいです。
子どもの年齢や能力に合わせて分類すること。それが「適度な分類」といえます。
ちなみに、遊ぶときに一式全部出すようなおもちゃ(おままごとやプラレールやブロック)は深い収納を活用しても良いですね。
一目で分かる収納を作る4つのコツ【整頓】
適度に分類することができれば、続いては子どもにも分かりやすいよう収納を整えていきます。
子どもが自分で片づけをするためには、何をどこに収納すればいいか「一目で分かる」ことが大切です。
一目で分かりやすい収納とは?
- 定位置が決まっている
- 動線が考えられている
- ラベルや写真で中身が表記されている
- 量の少ないおもちゃは透明の袋を活用
それでは1つずつ説明していきます。
1.定位置を決める
「定位置を決める」ことは片づけにおいて以下のようなメリットがあります。
- 家族みんなが、物の場所を把握できる
→物の場所を聞かれずにすむ - 迷いなく目的の物を取り出せる
→探し物が減る、余計な物で散らからない - 迷いなく目的の場所に物をしまえる
→物の出しっぱなしが減る
例えば、「ここの引き出しを開けたらはさみが入っている」
と、家族みんなが把握しておけば、それぞれが探し物をする手間を省けます。さらに「お母さーん、○○どこ?」が減るので、お母さんの負担が軽くなりますよね。
子どものおもちゃの場合も一緒で、いつも同じ場所に同じおもちゃが収納されていれば、子どもは迷うことなく目的のおもちゃを取り出すことができます。その際に余計なおもちゃを出さずに済むので無駄に散らかりません。
収納場所を決めたらそこには余計な物を置かないことも重要。1つのスペースに複数の物を収納すると分かりづらいですし、物をしまう時に邪魔になります。
そして何よりも大事なのが「使ったら元の場所(定位置)に戻す」こと。これを徹底すれば散らかりません。
「それができれば苦労しない…」と感じるかもしれません。しかし、物を減らし、アクション数を減らし、定位置を決めることで、迷うことなく「元の場所に戻せる」ため、片づけの習慣が身に付きやすくなります。
仮にはさみの定位置が決まっていないとします。「どうせまた使うからテーブルの上にでも置いておこう」と適当に放置してしまうでしょう。そのような人は他の文房具や食べ物、郵便物なんかも同様に放置してしまうため、テーブルの上はごちゃごちゃに散らかってしまいます。
このように、定位置が決まっていないことは散らかる原因になります。どんな物にでも定位置を作り、きちんと元の場所に戻す習慣を身に付けることが重要です。
子どもでも元の場所に戻しやすくするには、定位置にラベルを貼るのがオススメです。
文字の読めない幼児には写真を貼ると分かりやすくなります。
2.動線を考える
せっかく定位置を決めても、使う場所から離れた場所が定位置だと散らかります。
例えばいつもリビングで遊ぶのに、子ども部屋におもちゃを収納しているような場合。
部屋をまたいで片づけするのが面倒なので、リビングに散らかしっぱなしになるでしょう。
「キッチンは1階ですがダイニングテーブルは2階にあります!」なんて家はないと思います。想像するとめちゃくちゃ不便ですよね。
当たり前すぎて意識していないですが、物にも適材適所があるってことです。
他にも、子どもが学校から帰宅後ランドセルをリビングの床に置きっぱなしにしてしまうとします。ランドセルの収納場所は子ども部屋ですが、声をかけてもなかなか片づけてくれないような場合。まずは子どもの動線を考えてみてください。
帰宅→ランドセルをリビングで降ろす→手洗い・うがい→リビングや外で遊ぶ
仮にこのような流れであれば、子ども部屋は一切通ってませんよね。そうであれば、玄関からリビング、洗面所までのどこかにランドセルの置き場所を作れば、少なくとも床に放置される確率は減ると思います。
子どもがランドセルを片付けない場合、もしかしたら親もバッグの定位置が決まっていないかもしれません。「どうせ毎日使うから」と、ソファやダイニングなど「家族共用の場所」に、バッグを放置することが習慣化していませんか?子どもは無意識にそれをまねしているだけかもしれません。
おもちゃにしろバッグにしろ、いつも使う場所の近くに収納を用意しましょう。
子どもの様子を観察したり、子どもと相談して、遊び場所と収納との動線を考えながら定位置を決めます。
さらに収納するおもちゃ同士でも動線を考えることがオススメです。例えば、お人形とおままごとはよく一緒に遊ぶから、近くに収納するなどです。もはや必ず一緒に遊んでいて他の遊びに使わない人形であれば、おままごとと同じボックスに収納しても問題ありませんよね。
一度決めた定位置に固執せず、生活しながら使いやすいように改善していけると良いですね。
3.ラベルや写真で中身を表記する
動線を考えた定位置を決定したら、分かりやすいようにラベルを貼ります。
きちんとラベリングすることは、片付けにおいて大人にも子どもにも効果的です。
収納場所くらい覚えられるだろうと思っていても、意外とどこにしまったか分からない、何が入っているか分からない、どこに戻せばいいか考えるのがめんどくさいなんてことが多いからです。
特に複数の物を出している場合、記憶を頼りに片づけると時間がかかるので地味にストレスを感じますし、とても面倒くさいです。結果的に片づかなくなります。
また、家族と物の場所を共有したい場合にもラベリングは有効です。子どもから「○○どこ~?」なんて聞かれることも大幅に減ります。
テプラなどを活用すれば美しくラベリングできますが、まずはマスキングテープなどにペンで書いて貼っておきましょう。
なぜなら、収納は使いながら改善していくべきだからです。中身の場所を変えたいとか、ラベルの表記をもっと詳しくしたいという時に、すぐに修正できるマスキングテープは便利です。
しばらく生活して使いやすい収納が固まってきたら、美しくラベリングしましょう。
大人や文字の読める子には中に何が入っているかを書いて、引き出しやらケースやらに貼っておけばOKです。
就学前などの字がまだきちんと読めない子は、字を読むことで一生懸命になり疲れてしまうので、イラストや写真で中身を表示することが有効です。
我が家ではおままごとのケースに、実際のおもちゃの写真を貼っています。
お片づけに慣れないうちは、ケースのふたや側面など数か所に写真を貼ると良いです。そしてさらに、棚の中や床などの、ケースを置く場所にも写真を貼っておくと良いです。
ケース類を床に直置きする場合は、置いて欲しい場所にケースの形に合わせた目印を付けると、子どもに分かりやすく効果的です。これもマスキングテープなどを利用すれば簡単に剥がせて便利です。
4.量の少ないおもちゃは中身が見える収納を活用する
ブロックやおままごとのようなかさ張るおもちゃは、大きめのケースに入れてラベリングしていますが、子どものおもちゃには細かいものもありますよね。
我が家で言うと、100均で買ったペンや折り紙、リカちゃん人形の着替えや小物、お友達にもらったお手紙などなど。
そういった、量は多くないけど分類しておかないと探すのが大変な物たちは、100均で購入した透明のケース(袋)に収納しています。
ファスナーが付いているビニール素材の収納袋や、プラスチックでできた硬いファイルタイプのケースなどです。
ペンだけ、折り紙だけ、リカちゃんの小物だけ、それ以外の小さいおもちゃだけなど、それぞれをケースに分類してもあまりかさ張りません。
それら透明なケースたちをまとめて大きなボックスに入れていますが、中身が見えているので探すのも簡単です。袋やケースがしっかりしているので、ボックスの中に立てて収納することもできます。
大人の収納であればジップロックを活用するのも経済的でオススメですが、子どもの場合は開け閉めが難しいので片づけを困難にしてしまいます。また、意外とすぐに破れてしまう可能性が高いです。
最初に収納を整えるのは親の仕事
物を手放す「整理」では、必ず子どもと一緒にやりましょうとお伝えしました。それは、子どもの所有物を勝手に捨てることで信頼関係を失う可能性があるから。そして、物を捨てる作業には「いる・いらない」の判断力と実際に手放す決断力が必要で、それらを身に付けるためには訓練が必要だからです。
しかし今回の「整頓」では、動線や視認性をよくするといった効率を上げるための作業がメインになります。
どうすれば「必要な物」を「必要な時」に「必要なだけ」取り出せる収納を作れるのか、といった「効率のよさ」を考えるには、経験や試行錯誤が必要です。
そこを大人が代わりにやってあげて、「こうすれば少ない動作で片づけられるんだ」とか「ラベルが貼ってあるとすぐにしまえる!」という事実をまずは体感させてあげます。
子どもにとってそれが「当たり前の収納」になれば、一から自分で収納を考えるときの基準となり、自然と散らからない部屋へと整えることができるでしょう。
小学生くらいの子であれば、「どうすればもっと片づけがラクになるかな?」とか「もっと簡単に物を取り出せる工夫はない?」と問いかけてみると、大人が思いつかないようなアイデアを出してくれるかもしれません。
子どもも一緒に試行錯誤することで考える力も身に付きますし、より片づけを身近なものに感じられます。
まとめ
今回は、子どもに教える「整頓術=取り出しやすく分かりやすい収納」についてのお話でした。
取り出しやすい収納とは?
- 物を出し入れするのに必要な動作(アクション数)が少ない収納
- 適度に分類されている(分類が複雑すぎない)収納
一目で分かりやすい収納とは?
- 定位置が決まっている
- 動線が考えられている
- ラベルや写真で中身が表記されている
- 量の少ないおもちゃは透明の袋を活用
家族で過ごす空間をキレイに保つためには、まずは大人が収納を整えてあげる必要があります。そして、生活の中で試行錯誤しながら改善していくことが大切でした。
特に子どもはどんどん成長し、使う物も目まぐるしく変わっていきます。我が家も常に試行錯誤しているような状態…。
しかしそれが片づけの「習慣」として身になり、子どもの将来のためになると信じています。
ぜひ親子でコミュニケーションを取りながら「整頓」してみてください。
今回は「整頓」に特化した内容でしたが、整頓の前に重要な「整理=物の捨て方」の話や、片づけ全体のプロセスについて紹介した記事もありますので、ぜひ一緒にご覧ください。
今回も参考にさせていただいた書籍を紹介します。
[著]近藤麻理恵さん「人生がときめく片づけの魔法」
[著](株)OJTソリューションズ/亀山聡さん「トヨタの片づけ」
[著]伊東裕美さん「3歳からできるお片づけ習慣」
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